定期昇給見送りについての貧乏主婦の見解

 新聞には、定期昇給が「最後の砦」だと書かれてあった。定期昇給が見送られるようになった、不景気もいよいよ本格的だ、と。
 でも、ずいぶん昔の話だが、私が最初に就職した会社の二回目の春には定期昇給がなかった。
 中小ではあるが零細ではない。関連会社を含めれば業員300人を超える事業所である。事務部門には組合がなく、夏に近くなっても昇給がなかったので聞いてみたら、今年は定期昇給はなしとのこと。
「………」
 何が起きたかというと、士気が落ちた。
 士気が落ちた職場では何がはじまるかというと、人間関係の悪化か怠業か就活かである。
 人間関係の悪化というのか? 5〜6歳くらい上の同僚(♂)が、プチストーカーになって困った、それくらいで。
 怠業というか、もともとあまり忙しい職場ではなかったので、仕事中に、何か書くときは、ペン字の練習、つまりやたら丁寧に書いていた。業界紙や新聞や会社に来る印刷物もやたら丁寧に読んでいた。
 そして私は就職活動をはじめた。
 二十代前半で入れる給料のいい会社。正社員。
 そんな職場に田舎で中途採用をかけると、山のように応募者がやってくる。それでも運良く転職先が
決定し、労働法に則り、退職届を出してきっちり二週間後に私は会社をやめた。親切で優しいひとたちと別れるのは本当に辛かった。
 入った会社は、仕事はきつかったし、ろくな上司はいなかった。
 だけど、後悔してない。
 「何がやりたい」という明確なビジョンなしに労働している以上、大事なのは金額なのだ。月給手取りがいきなり倍になったのだから、病気になるほどのストレスでない限り文句は言えまい。
 
 それにしても、定期昇給見送りがニュースになるような大企業はまだいいよね、と思う。残業が減ったって、定期昇給がなくたって、たぶん(あくまで私の感覚で、ですが)生活できる給料だと思うもん。もともとの給料が少ないのに、ずっと定期昇給がなく、まだ給料が出るだけましということがニュースにもならない中小零細企業はたくさんあると思う。そういう会社で働いている勤勉な良い人たちがたくさんいる、ということの想像がつくようになったぶん、最初の会社に勤めたことも後悔してない。

 以前の職や、転職後のことなどについてはまた書くと思う。