有名駅弁。(2/2)

(上から読んでね)
 と思ったので調べてみる。
 福岡の飛行場から水上飛行機で東京に送ったとある。昭和4年から昭和9年にかけて水上飛行機を飛ばしていたのは名島の空港http://www.warbirds.jp/airport/fukuoka/najima.htmlだが当時、東京への直接便はない。 特別機を仕立てたのか? 大阪から乗り継ぎしたのか?

 いずれにせよ、大日本帝国の時代ということならなんとなく納得である。現人神(当時)に召し上がっていただくのであるから、それはほとんど神事に近い話となり、だったら白装束も納得、「献上」とか「御用達」とかの2〜3文字は大変だったのだな、と。愉快な話ではないが、時代背景と思えば納得である。

 この鮎屋さんは、宮内省(当時)から要請だとか注文があったのではなく、勝手に思いついて鮎を差し上げたのだから、それがどんなに手間がかかって大変だったかを自慢げに書けば書くほど、下品だと思う。
もちろん、心から、自慢のおいしい鮎を陛下に召し上がってほしかった、というのもあるかと思うけど、何十年も経った駅弁に、こんなに長々と献上のプロセスを印刷するのは商品に箔をつけるために天皇を利用してるってことだよね。
 他のメーカーでは「献上」とか「御用達」の品物には、ただ「献上」とか「御用達」といった文字しか書かれていない。献上プロセスについて包装やリーフレットなどで延々と語ったものは見たことがない。書くと下品になるからだ。

 それから、時代をはっきり書くべきだ。戦前とか、昭和何年、と。現代の話だととんでもない話になってしまう。そのへんの曖昧さが不愉快のもとだったのだ。

「戦前に天皇陛下に鮎を献上したこともある鮎屋で〜す」
 自慢したいなら、これだけで十分である。

 旨いものはフツーに食べたい。ヘンな物語をつけた味付けが逆効果だってこともあると思う。

 件の紙を夫に見せると、彼は読んでから
「‥‥‥喰う前に読まなくて良かったよ。でも買う前に読んでたら、絶対買わんだったろうな」

 かくして、この有名駅弁は、今度食べるときはどなたかからいただいたとき、ということに決定したのでありました。
 こんなことが書いてある弁当が九州の駅弁ランキング3年連続1位なんだよね。みんな読んだりしないのか、読んでもおいしく食べられるメンタリティの持ち主が多いということなのか。