愛しのアジフライ
長崎県の松浦市に旅行に行ってアジフライを食べたという話を聞いた。彼の地では、刺身にできるようなアジをフライにして提供し、それはおいしいのだそうだ。
だが私は知っている。アジは遠洋巻き網漁で捕獲され、松浦で水揚げされるものとまったく同じものが博多にも漁船でやって来る。松浦で食べられているものと福岡市内で食べられているものはまったく同じ新鮮さのものなのだ。これは、スーパーに入っている魚屋さんが教えてくれた。
アジフライ定食は、博多漁港近くに行けば1100円で食べ放題できるらしいが、いくらおいしいといっても、そんなにはいらないな。
と、思っていたら、揚げたてを一切れから食べられるところを見つけた。西鉄久留米駅二階のフードコートに、アジフライの三陽食堂が入っているのだ。ここでは食べ放題はないかわりに、一切れ180円だけでもアジフライが買えるというので買ってみた。
自販機でチケットを買い、モニターに番号が出てくるまでしばし待つ。揚げたてアジフライに、たっぷりのタルタルソースが添えられたお皿が、四角いトレイにお水のコップといっしょに乗っている。
カリカリパン粉の衣とフワフワのアジがアツアツである。タルタルソースもおいしい。ああ幸せ。
最初の一切れには、価格以上の価値が上乗せされ、ふた切れ目、三切れ目と相対的に価値が下がっていくことは、ミクロ経済学を履修した人は、法則として習ったと思う。これはお金が乏しい生活を強いられる私にとって、大変役立っている。
一切れだけアジフライを食べることは、アジフライを食べて得られるお金あたりの幸福度を最大にするのだ。揚げ物をたくさん食べるのはちょっと……という人も幸せになれるアジフライだ。おにぎりとお茶のランチが、いきなり豊かになる180円の使い道だと思う。